懸魚

9月17日(金)

台風14号が接近中。

 

植物や昆虫の名前、その由来を調べてみると、なかなか面白い。

その延長でお寺の中にもいろいろな動植物の彫刻があるので、それを調べてみると、これもなかなか奥深い。

本堂正面、向拝ごはいには中央に鳳凰が羽を大きく広げて参拝者を迎える。

屋根瓦の下に、屋根に添って付けられた板を破風はふいたといい、その破風板に吊り下げるように付いているこの鳳凰の彫刻を「ぎょ」と言う。
ただし、この向拝はから破風はふと言う建築様式なので、から破風はふの懸魚は「卯毛うのけどおし」とも呼ばれるそう。

懸魚げぎょ

破風はふ〉は風雨から建物を守ったり、火事の場合に火が屋根裏に入るのを防ぐために付けられたもので、〈懸魚〉にはそれに加えて、水の中に棲む魚を懸けることで、「水をかける」と言う意味から火事避けとして取り付けられたのが始まりだそう。

ちなみに、むくり屋根の本堂の破風板に付いているのは、比較的よく見られるカブラのような形に見えるかぶら懸魚げぎょ

山門の懸魚も蕪懸魚。

南門の懸魚も蕪懸魚。

蕪懸魚には、六角形の飾りが付き、そこからニョキッと何かが出ている。

この飾りと同じようなものが本堂廊下の長押なげしと呼ばれる横木にも。

釘隠くぎかくしでもあるこの六角形のものを〈六葉ろくよう〉と呼び、その中心から出ている棒を〈たるくち〉、その根元にある菊の花のようなものを〈菊座〉、もしくはこの釘隠のように饅頭型をしているのを〈円座えんざ〉と言う。
これも「樽酒の口を栓で止める⇒水を注ぎ出す」という意味で、火事避けを現しているとか。

そして、この六葉に見られる6つのハート。
これはハートでなく、〈猪目いのめ〉と呼ばれる文様で、こちらも火事避けだとか。

 

 

木造建築で一番怖いのが火事。

火事で大切な建物が失われないよう、昔の人はそんな願いをこうした形に表したのかな。

 

その他にも、

海老えび虹梁こうりょう

海老のように湾曲した虹梁。

かめ

格天井ごうてんじょうに使う湾曲した天井隅の部材のこと。

さば

門扉などに付いている装飾金具。

鮟鱇あんこう

雨樋の軒樋から立樋に移行する部分の集水器。

そして、

かえるまた

寺社建築の名称には、何だか水に関係するものの名前が多い。

これらもそう言う意味があるのかな?

 

専徳寺の懸魚(卯毛通)にもう一つ。

本堂からの庫裏への渡り廊下には唐破風の卯毛通に鶴の彫刻。

この唐破風は本堂の屋根と重なる一部だけ檜皮葺で寺紋入りの不思議な建築。

 

鶴は千年。

鳳凰は、「聖天子の出現を待ってこの世に現れる」瑞鳥とも言われる。

〈聖天子〉とは、徳の高い帝という意味だそうだけど、お釈迦さまが入滅されて五十六億七千万年後に降下される弥勒菩薩の時に現れるのかな?と勝手な想像。

でも、そのくらいずっとお念仏のご縁が永代にわたって続きますようにとの先人の願いをもって造られたのかなぁと。

大切に。